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2010-04-07

Hな小説。

読書の感想。

ネタバレもあるし、巷で「官能小説」と言われている本も読みましたので、かなり下品な記述もございます。不快になりそうだな、と言う方はスルーして下さい。

まずは『6番目の小夜子』

さよこ。

恩田陸さんのデビュー作で、今更ながら初めて読んだ。ファンタジーノベル大賞で最終に残ったというだけあって、無茶苦茶上手い! 凄い書き手だってのが素人でもわかる。

でも。。。。

こういう終わり方は私にはわけがわかりませんでした。

謎って、いちいち解き明かさないとダメなのか。
謎を謎のままにしておくにしても、「必然性」「矛盾無い謎」というのは小説の基盤となるものなので、難しかったんだろうけど。ぐいぐい読んで、最後の最後で「い?」みたいな。

頭のいい人、おしえて。誰がどーなってどーだったの? オバケの仕業? 犬と小夜子の関係は???


次は岩井志麻子さんの『邪悪な花鳥風月』

岩井志麻子。


この人の作品好きだなあ。本当に面白い。「フィクションの中の凄まじいリアリティ」、と言う点に於いては桐野夏生さんと共通する所がある。プロの作家さんには失礼な言葉だとは思うけど、上手い!!


次は村山由佳さんの『ダブルファンタジー』

wf

権威ある賞を3つも取ったという凄い本。本が出た当初も、究極の官能小説、みたいな宣伝で、どんなのかなあと思って読んでみた。確かに上手い。この人の筆力は半端無いのでぐいぐい読ませる。長い話なのに破綻無く最後まで読ませて綺麗に終わらせる。唸った。本当に上手い作家である。

でも。

そんだけ(爆)

多分この作家さんは物凄く生真面目な人なのだと思う。インタビュー等でも、この作品を書くに当たっては、今までの殻を破ったと仰っているし、実際そうだろう。これ殆ど私小説に近いもの、凄まじい覚悟が要ったと思う。大した根性である。それだけでも3つも賞を取ったのは当然だと思う。

でもそれって元アイドルが脱ぎました! みたいな感じの衝撃なのかなとも思う。性描写も大騒ぎされていたけれど、凄いのは「上手さ」であって、いやらしくは無いよ、これ。官能的で綺麗だけど、衝撃的ではない。いやらしさとか官能的という部分で言うと、岩井志麻子さんのほうが上手いと思う。あと、森茉莉。

というのも。。。ヒロイン(35歳の売れっ子脚本家で、夫がありながら次々と男性と肌を重ねていく)が、妻子ある学生時代の先輩(少しだけ付き合った事もあった)岩井と再会してベッドを共にするシーンがあるんだけどこれが。。。

この男は物語のキーになって、二人はもう毎回毎回Hしまくるのであるが、ひょろ長くて植物みたいとかキリンみたいに例えられている大人しい人で、学生時代はHも大人しくてつまんなかったのに、再会Hでは、凄まじいテクニシャン(笑)になっているのだ。それでも彼女に対してはていねいな言葉遣いは崩さず、初心で乙女入ったような反応。さてその再会H。あまりにも物凄くて彼女は失神までしてしまう。で、その時の描写がこれだ。


『この岩井と、学生時代の彼が同じ人物だとは信じられなかった。結婚生活とは、なんと偉大なのだろう』



?????


ヒロインは、ああ、月日がたって、彼も「結婚して」こんなにHが上手くなったのね、と、感慨に耽るわけです(結婚してそうなると思っている、という時点で意味不明な感慨ですが)。で、ヒロインは彼に『奥さんにも今みたいな事してあげてるの』と聞くのだが、すると彼はこう答えるのだ。


『まあ、時にはね。でも、妻はあなたほど深く感じてはくれませんから』

。。。。。。。訳がわかりません(爆)。


深く感じない奥さん相手に、病的ともいえるH好きのヒロインを失神させてしまうようなテクニックを磨けるとは面白い男です。逆に言えば、奥さんが感じるように頑張った結果、凄いテクニックが身についてしまったんでしょうか。まあここは男の狡さで「そうだよ。妻も凄いんだよ」なんて言う筈も無いんですけどね。本当はヒロイン以上にHな奥さんに調教されていたんでしょうか。


とまあ、こういう描写が延々と続きます。ヒロインはH無しでは居られない女で、好きになっては飽きられたり飽きたりして、男を乗り換えていくんですね。で、そこにいちいち尤もらしい理由付けをしては、自分で自分をイタイ女だと自覚して自己嫌悪に陥るわけですが、彼女なりに成長していくし、その性癖に関してもきちんとした理由が明らかにされていく。平たく書けばそれだけの話なんですが、作者の筆力が素晴らしいので、細かな心理描写も本当にリアルで、本当に上手くて面白い小説になっています。

かなりアイタタな主人公ですが、世界は広いので、似たような女は恐らく結構居るかもしれません。誰しもこういう、「恋は盲目」「自分に酔っちゃう」所は持っているので、共感する読者も沢山居ると思います。もはやセックス依存症といってもいい位の状態の自分を「恋愛体質」と言い切ってしまうあたりも痛々しくてリアルです。

しかし私としては、特に共感も嫌悪も無かったなあ。小説って面白いなあって思っただけですが、それを思わせる作品って、実は少ないので、やはり村山由佳は凄い作家です。


あと、書いている人が(多分)生真面目なので、わざとではなくお腹が捩れるような部分が随所にあるこの小説ですが、何と、ベルばらの台詞が出てくるのである!!


岩井との体の関係(恋愛ではなく、本人は友情Hと呼んでいて、本当に好きな男の相談までしているのである)にどっぷり嵌りつつも、忘れられない男(岩井とは正反対の、肉食系の劇作家)がいるヒロインが、本当の男とは、岩井のような男の事かも。。と思い始める所。

『揺るがない優しさこそがほんとうの男らしさだと気づく時、たいていの女は既に年老いてしまっている…そんなふうな言葉を読んだのはどこでだったか。岩井が無条件に自分に示してくれる情は、まさにそういう類のものに当たるのではないかと思うのだ』


『どこでだったか』って。。。。それ、オスカルの台詞(笑)

オスカル。


週間マーガレット38号。オスカルとアンドレが結ばれる前の台詞。自らアンドレを寝室に招き入れたオスカルは、自分をアンドレの妻にして欲しいと言うんですね。そして、「俺は地位も財産も名誉も武力も何も持っていない。こんな自分でいいのか」と躊躇するアンドレにこう言うんです。


『誰かが言っていた…心優しくあたたかい男性こそが、真に男らしいたよりになる男性なのだということに気付く時、たいていの女はもうすでに年老いてしまっていると…よかった…すぐ傍にいて私をささえてくれるやさしい眼差しに気づくのが遅過ぎなくて…』(池田理代子・ベルサイユのばらより抜粋)


おネエ言葉のダブル不倫男岩井と同列にされたアンドレ涙目。。。。。

わざとなのか偶然なのか知らなかったのかわかりませんが、昔のとはいえ超がつく有名漫画に出てくる台詞。誰もインタビューでもレビューでもここのところを突っ込んでくれないのがベルばらファンとしては残念です(笑)。この台詞って、池田理代子さんのオリジナルだと思ってたんですが実際はどうなんでしょうか? 世界の格言、名言的な、もっと古い、偉人の言葉なのかな?


この小説、買っちゃおうかな(えええええ!?)



最後に。

官能的文章という事なら森茉莉だろうと思っているのだが、当の本人は「性を書こうとは思わない」というエッセイでこんな事を書いている。

『私は、性と文学、とかユマニスムと文学、とか、論ずるのを嫌いである。性も、ユマニテも、組織も個人も、夢も現実も、その時々の書く人の発酵の具合で、一つの文学の中にあるもので、それらのはいった混合体が文学なので、何々を扱った、という小説を私は好きではない』(森茉莉全集3・私の美の世界 記憶の絵 より抜粋)


森茉莉は大文豪森鴎外の娘である。

随分年を取ってから小説家デビューし、高い評価を得るが、お気に入りの、散らかり放題の小さなアパートの一室で、ある日突然、たった一人で息を引き取った。

病死であった。


一つのテーマを突き詰めて、自分をとことんまで追い込んで書く作家も居れば、ふわふわ浮遊してどこかにどんとぶつかり、それが大当たりしているのに本人はそれに無関心で「書けてしまう」作家も居る。

小説って面白い。


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コメント

Re: No title

佐知子さん、ご訪問ありがとうございます。
官能小説は、他のジャンルの小説に比べて作家の素質が露になり易いのかなあ、なんて思います。
またいらして下さいね。

No title

はじめまして

官能小説と言われるものは私も夫も好きで、参考にしたりすることもあるので、書き込みました。

やはりヒロインの心がしっかり読みとれる作品が好きです。

更新、期待しています。
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