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2009-05-17

良心的バイク屋、乙女を救う!

今乗っているピンクナンバーはまだ新しい。

元々家にあった小型ATに乗ろうと免許を取った私であるが、ある事がきっかけで、買い替えとなった。

元々あったバイクは喜八郎のシグナス。中古で買ったもので結構年季も入っていた。

免許を取って暫くは、混んでいる道で乗るのは怖く、夜中に貸切状態になる道で練習していた。


人間同士だけでなく、物と人間の間にも、相性と言うものは確かに存在する。


私はこのコがあんまり好きじゃなかった。




これはあくまでも私の個人的な感性によるもので、(しかもその感性は、一般的な感覚とかなりずれているらしいと言う事も自覚している)同じものに乗っている方は気分を害さないで欲しいのだが、まず真っ黒なボディ。これがダメだった。スクーターなんだけどいかついシルエットも、なんだか太った蟻みたいに見えて生理的に受け付けない。シート幅も広いのでチビ短足の私には足つきも悪く、片足つま先。車体も重くてバランスが(私にとっては)悪い上にハンドル幅も広いので取り回しもきつく、センスタがけも重くて辛い。唯一良いのは走ってるときの安定性の良さだが、信号待ちは随分気合が要ったし怖かった。

おまけに冬。

この地域は随分と冷え込むのだが、そういう時はエンジンのかかりが悪く(古いマシンだったというのもあるだろうが)何度もキックしなければかからない。

それでも何とか乗り慣れて来たある日の夜、貸切状態の幹線道路をトコトコ走っていると、一台のパトカーに止まるよう指示された。

なんだろうと思ってエンジンを止める。嫌だなあ、またキックしないとかからないし、足つき悪いしスタート自体苦痛だわと思っていると、おまわりさんはこう言った。

「無灯火で走っちゃダメですよ。免許証見せて」

ええ? ライト点いてない? まさかあ…

「あーこれいかれてるな、壊れてるよ」

あれやこれやとマシンをいじって調べていたもう一人のおまわりさんが言った。「点いたり消えたり…ダメだこれ」

そして免許証を返してくれて「まあ今回は見逃してあげるけど、それすぐに修理に出してくださいよ。点いたり消えたり危ないからね」と言ってくれた。


帰り道。

緩やかな下りで、しかもちょっと斜めっている道路で信号待ちしていたら、足がプルプルしてきてバランスを崩して初の立ちゴケ。引き起こして(これもやたらと重かった)何度もキックするもエンジンがかからない。

仕方ないので喜八郎に電話してから、最寄のコンビニまで押して歩いた。

田舎町の夜は静かで寒い。

道沿いには住居やら店舗やら建物が隙間無く建っては居るし、そこから漏れる明かりや外灯でそれなりに明るい。だが、人通りは無く車も通らない。静まり返った道に一人。シグナスは重くて腕がだんだん痛くなってくる上に、寒さで手がかじかんで、ハンドルを握っている感覚が無くなって来た。


私は心の中でつぶやいた。

「ごめん。私やっぱりあんたの事、好きになれない」

多分向こうもそうだったと思う。私みたいな乗り手に振り回されて、さぞや迷惑な事だったろう。

喜八郎が車でコンビニまで来てくれて、何度もキックしてやっとこさエンジンがかかった。


私はシグナスとの相性に関しては自分からは何も言わなかったのだが、家に帰ってから、喜八郎が「足つきが悪いんじゃしょうがないな。危ないから買い換えよう」と言った。そして色々調べ、価格や燃費、車体の大きさや安定感等から候補に上がったのがスズキのアドレスV125とヤマハのマジェスティ125、通称コマジェだった。



シグナスを買ったバイク屋さんに行き、事情を話して新車のアドレスを見させてもらったのだが、そこにコマジェの中古もぽつんと置かれていた。

色は黒だが私の許容範囲の外観。中古とはいえとても状態が良い。価格は新車のアドレスよりも高かったが、喜八郎は断然コマジェの方を欲しがった。

私はアドレスとコマジェ、それぞれの足つきを確かめ、センスタがけをしてみた。

アドレスは足つきもセンスタがけも取りまわりも問題なし。コマジェは見た目は随分大きく感じられるが、実際の足つきはアドレスと大して変わらず、センスタがけも難なくこなせた。


だが問題は取り回しだった。

車体自体のバランスがいいのか、押して歩く事自体は問題ないのだが、いかんせん全長2メートル越えと大きい。空いている広い駐車場なら何とかなるだろうが、よく行くショッピングモールの混雑した駐輪場等狭い場所で、この巨体をスムーズに停めたり発進させたりする事は、小柄で初心者の私にとっては決して楽ではないだろうと思った。


コマジェの方に魅力を感じている喜八郎は、足つきが問題無いなら慣れれば大丈夫だよとコマジェを推した。だが私が、自分がまだ免許を取って間もない事や、シグナスが無理だと思った理由、そして今感じたコマジェの車体の長さから来る取り回しへの不安を正直に言うと、バイク屋のおじさんはこう言った。


「ならアドレスにしておいた方がいいですよ。初めてのバイクは扱いやすいものに限ります。初心者でもいきなり大きなのに乗ろうって人も居ますけどね。扱い難いバイクを最初に持つと、怖いし面倒だしで億劫になって来て、乗れなくなっちゃうんですよ。最初に楽なものに乗って、慣れて物足りなくなってきたら大きいのにすればいい。これは小回りも利くし燃費もいいし、荷物も載せやすい。奥さんが買い物なんかにも使うなら絶対こっちです」


コマジェの方が高いんだし、夫婦で見に来た男の方はバイク慣れしてコマジェを欲しがってるんだから、ただ売りたいだけのバイク屋なら絶対にコマジェを薦めただろう。初心者の女の方は取り回しが不安なだけで足つきは問題無いのだから、「そんなの慣れの問題ですよ♪」「皆最初はそうですよ♪」「これは安定性があるから却って安全ですよ♪」とか何とか、どうにでも説得出来ただろう。


だがこのおじさんはそれをしなかった。

売り上げよりも、これから乗ろうとする人の心や、バイクとの相性をまず第一に考えてくれた。



これはバイク屋としては当然の事と思われるだろうが、案外そうでない店もあるという。


私はバイクに乗るようになってから、バイク雑誌やバイク関連のサイトなんかもよく見るようになったけれど、初心者に対して無謀とも言えるようなマシンを売りつけるバイク屋というのが確かに存在する。


免許を取った嬉しさや勢いで大型のバイクを買ったものの、重すぎて車庫から出す事すら出来なかったとか、止まる度に立ちゴケしてもう怖くなってしまった、公道で事故に遭ったなんて笑えないエピソードもある。


取り回しや足つき、操作性に関しては、適性以外に慣れというものもあるだろうが、本人の性格やバイクとの相性も大いに関係してくる。


私のように、絶対に無茶は出来ないという人も居れば、あえて難しい車両に挑戦して克服してやろうとか、扱い難い車体に対して、却って闘志が燃えると言う人も居るだろう。足つきが悪くても取り回しが辛くても、絶対にこれを乗りこなしたいという根性を持って練習し続ける事で、結果的に乗りこなせるようになる人も居るだろう。

だがそれは非常に危険な賭けでもある。


毎月読んでいる女性向けのバイク雑誌には、投稿だったり取材だったりで一般のバイク乗りの女性達が沢山紹介されており、その中には大型バイクのユーザーも多い。笑顔の写真と共に「足がつかないから止まるたびにドキドキしま~す♪」とか「もう何回も立ちゴケしてま~す♪」「一人じゃ起こせないけれど、女の子が転ぶと誰かがちゃんと助けてくれますよ♪」なんて、自分のテクニック不足や認識不足から来る失敗を、武勇伝のように語っている人も居る。


アホかと思うと同時に、絶対に私の前を走ってくれるなと願ってしまう。


公道は専用の練習場でもサーキットでもない。全く足が着かないとか、初心者でも無いのに何度も転倒したりというのは、明らかに「その人には不向きなバイク」なのだから、シート高その他扱いやすいように改造するなりスクールに通うなり、場合によってはマシンを手放す勇気も必要ではないだろうか。

確かに大型のバイクに乗るには、女性は男性よりも不利だと思う。


いくら男女平等といっても性差というものがある限り、女性は体力でも体格でも男性に劣る場合が多い。



私が小型ATの教習を受けていた時、同じコースで物凄く華奢で小柄な男の子が中型の教習を受けていたのだが、ヨロヨロしながらもちゃんと引き起こしもセンスタがけも一発で出来ていたし、8の字の取り回しもこなしており、逆に彼よりも体格のいい女性教習生が、取り回しでもしょっちゅうバイクを支えきれずに倒し、引き起こしもセンスタがけもなかなか出来ずに居て、やっぱり男の人って体力あるんだなと妙に感心したのを覚えている。

私の身長は150センチ。小型ATとはいえ足はべったり着かないし、原付にも乗った事が無かったしで教習は決して楽では無かった。体格のいい男性が易々と大型の教習車に跨っているのを見ると、「あと10センチ脚が長ければ教習も楽なのになあ」と正直思ったし、ヤンキーがビッグスクーターをチャラチャラ乗り回しているのを見て、「男並の体力腕力があればバイクの扱いも楽だろうなあ」と思ったりもした。



教習ならプロの指導員がついているのだし、そういった性差によるハンデは本人の努力や技術力である程度はカバー出来うるだろうが、実際に好きなバイクを買って公道を乗り回すとなると、女性は男性よりも選択肢の幅が狭くなるのは仕方の無い事で、それを悔しいとか勿体無いとか言って無理してしまうと、命取りになる場合だってある。



自分が納得の上で天国の住人になるのは勝手だが、巻き込まれる人や遺される人の事も考えて欲しい。そして、本人がそれを出来ない場合、周りの人は勇気を持ってアドバイスしてあげて欲しい。



私はあの時、コマジェを売りつけられなくて本当に良かったと思っている。

アドレスはとても扱いやすいバイクなので、信号待ちや駐車等で不安な思いをした事は一度も無い。行きたい所に行けて停めたい所に停められる。不安無く乗れるというものがこんなに快適で楽しいものだなんて、シグナスの時には感じられなかった事だし、コマジェでも感じられなかっただろう。唯一の欠点と言えば、やはり小ささから来る安定感の無さで、風で煽られ、道路の凸凹でガクガクしたりとちょっとスリリングな所だろうか。私ももうちょっと大きなのにも乗ってみたいなあなんて思い始めた所だが、こういう気持ちになったのはバイクが楽しくなった証拠であり、これがシグナスやコマジェだったら「もうバイクはこりごり」となっていた所だろう。

先日も書いたが、「ありのままの自分を受け入れる」のはとても勇気が要る事だし、辛い事でもある。



だがそこを認めなければ、前には進めない。



背伸びして見る風景は、それなりに自尊心を満たしてくれるかもしれない。


だが、永久に背伸びをし続けることは不可能で、いつかバランスを崩して倒れてしまう。


普通に姿勢を正して見る風景は平凡なものかもしれないが、じっくりと正面を見据える事で、気づかなかった素敵な事を沢山発見出来る事もある。下から見上げる事で気づく事だってあるのだ。



「このバイク、今のあなたには無理だよ」


なかなか言えない言葉だが、家族や友達、ましてやバイクを売る立場の人には、勇気を持って言って欲しい言葉でもある。それは相手を否定する言葉ではなく、大切にする言葉だからだ。


もしあなたがこの言葉を言われたとしたら、ちょっとばかり悔しいかもしれないが、素直に認めて欲しい。


そうする事で、いつか本当の意味で、あなたはそのバイクに相応しいライダーになれるかもしれない。
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