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2010-09-30

上品と下品のあいだ。

冷静と情熱のあいだという素晴らしい本がありますが、下品と上品との間には何が挟まっているのか。

上品、というのは少し違うかもしれない。品性といったほうがいいのかもしれません。


昨日、酷評しまくった「食堂かたつむり」最後まで読みました。


ほんとに気持ちの悪い本でした。




ペットの豚の「エルメス」を殺してパーティーの料理に出すとか、ラスト、窓にぶつかって死んだ鳩を羽むしって料理して食べたら失語症が治った、とか、そういう描写も悪趣味ですが、一番気持ち悪く感じたのは、作者がこういう話をいい話だと思って居る、その高慢さにあるんだと思いました。最初から感じていた不快な違和感やイライラ感の原因がはっきり判った気がします。

ほっこり系のテイストにまとめながらも、食べる事=命を頂いている事の残酷さ、傲慢さもきっちり描いています。。。という風にしたかったのでしょうが、見事に失敗しています。


というのも、食堂を営む事の難しさも神聖さも、命あるものを食する=殺して食べる、という事の残酷さも有難さも、うわべだけをなぞってるだけだからです。

書評では、豚のエルメスを殺すシーンが残酷だとか、鳩を食べるのが気持ち悪いといった感想も多くあるようで、確かにものすごく悪趣味なシーンなのですが、私はリアリティは感じませんでした。


文章に匂いが無いからです。


逆さに釣るしただの、ナイフで切ったら血がポタポタだの、内臓説明シーンだの、悪趣味な描写の連続ですが、空調の利いた部屋でスプラッターを見ているような感じ。解体する人、料理する人の汗や、その場所に漂っているであろう強烈な臭いが伝わってこない。これを読んで、「料理」という言葉の持つ重さなんて少しも感じられない。どこそこのオリーブオイルだの、なんたらの塩だの、これはこうした方が美味しいだのとやたらと蘊蓄めいているのですが、多分、頭でっかちなだけで、ちゃんとした料理をした事が無い人なのでしょう。

ちゃんとした料理、というのは、雑誌に出てくるようなこ洒落たものではありません。生きるための食事、という事です。

体裁を繕うばかりでなく、生きていくため、食べていくために、命を頂く、という料理です。


取材として、豚の解体シーンの見学はした「かも」しれないし、実際の鳩料理も見学したの「かも」しれませんが、あまりにも薄っぺらで、それなのにしたり顔で語ってしまうところに、多くの人が違和感や気持ち悪さを感じるのだと思います。


以前、ある雑誌で、小池真理子さんと浅田次郎さんの対談を読んだのですが、お二人とも、「小説家とは、一枚の絵はがきから、何千枚という小説を生み出す事だって出来る想像力&創造力があるものだ」、という趣旨のお話をされていました。


又、故、三浦綾子さんは、「想像力の無い者は愛が無い」とも書いておられました。


食堂かたつむりが気持ち悪いのは、作者の貧弱な精神性と、愛の無さ故です。


料理、失恋、失語、田舎、中途半端な方言(母親の事をおかん、と呼ぶからには相応の地方だとは思うが、何故か地元の人の大半は標準語をしゃべって居るという不自然さ)、こ洒落た食材の数々、と、あれやこれや、「ウケそうな要素」を詰め込んでは居ますが、これらもファンタジーとして成立せず、「偽物臭」だけが際立ってしまいました。母親の事を「おかん」と呼ぶ事についても、深い憎悪を持っている設定ならば、「おかん」と呼ばせるのは不自然。「母は」「あの人は」でしょう。

ペットの豚のエルメスを、余命少ないおかんのたっての願いで結婚式の料理として出す、というエピソードも、感動させようとして捻り出した「アイディア」に過ぎず、だから何のリアリティもないし、「そういう愛もあるんだ」という共感も得られないのです。


豪快に生きてきて、でも愛する人のために処女を貫いた(事になっている)おかんならば、自分の余命を知り、愛するペット豚のエルメスの行く末を思い、いっそのこと自分で食べてやりたい、と思うのならば、その最期はきっちり見届けなくては本物ではありません。でもそれをこの作者はさせません。


豚を殺すのも解体するのも料理するのも、全て娘と、その取り巻きのオヤジたちに任せっきり。

そして、結婚式の料理として目玉と爪以外はあらゆる料理にされて皿の上に並んだペットを、このおかんは何と、きちんと食べてあげないのです。


『実際には、おかんはただその場にいるのが精いっぱいで、ほとんど料理を口にする事が出来なかった。それでも、姿を変えたエルメスを、遠くから、深いまなざしで見つめていた』(食堂かたつむりより抜粋)

末期がんで食欲が無いそうですが、なんて薄っぺらい文章でしょう。なら「食ってやりたいから殺して料理してくれ」って言ったのは何だったのか(笑)

ただの「アイディア」として「ショッキングな話」「これも愛の形」みたいなエピソードを入れてみただけ、という事がバレバレです。余命幾ばくも無い人間が、ペット豚を食べてやりたい、となった場合、パーティー料理にしてくれとは思わないのではないか。まずは自分一人で、じっくり味わってあげたい、となるのではないでしょうか。それに、おかんがペット豚エルメスを飼っていた事を知っていた人達が、この料理をどんな顔して食べたんだか。私なら、手造り披露宴に呼ばれ、出てきた料理が新婦が長年ペットとして飼っていた豚だって判った時点でその場で吐くと思う。ああ自己満足母娘。


文体は、よしもとばななさん風ですが、これも失敗。


ばななさんのように、つらつらと平易な文章で書き連ねつつ、人の心を揺り動かす、というのは物凄い高等技術なので、底が浅い人が真似をすると、大変つまらなくなります。


ラストの鳩食いも大失敗。

料理とは、命とは、と語りたいがための最期の一発だったのかもしれませんが、よりによって鳩食いで失語症が治り、最初の一言が「おいしい」は無いわー(笑)「鳩がおかんだと思った」のなら、そして、突き動かされるように窓にぶつかって死んだ鳩を料理するのなら、羽むしってる最中にわんわん泣きだす筈なんですね。で、泣き声が出て、え、声出して泣いてるよあたし、あたし声出して泣いてるよ、みたいになるのが自然じゃないかなあ。第一声も、「おいしい」ではなくて「ありがとう」では? 鳩に対して、おかんに対して、命に対して。「おいしい」という言葉には、感謝の気持ちが無い。「作った私」が一番だから、こういう言葉がスラスラ出てくるわけです。



あと、おかんが結婚するにあたり、「ふたりは、田舎の人達独特の乱暴な言葉遣いによる、温かい祝福を受けていた」って文章があるんですが、こういう所もなんだかカチンと来るんですよね私は。


このお話は、どこをどう読んでも、男に捨てられてショックのあまり声が出なくなり、頭のおかしくなった娘が、「金のなる木」であるおかんから無心しまくって、何の儲けにもならない自己満足の食堂を開き、末期がんのおかんに頼まれてペット豚を殺して骨の髄まで料理してパーティーで振る舞い、おかんが病死したら更におかしくなって、最後には死んだ鳩をおかんだと思ってオーブンで焼いて食べたら声が出るようになった、という話でしかない(笑)。



この本でのペット豚食い、野生の鳩食い、のエピソードは、カニバリズムを彷彿とさせる。生活の手段として、飼っている家畜を有難く食べるのとは全く違います。



「愛しい者を食する事」を正当化する人は大変なナルシストですし、自分のしている事に疑問を持ちません。ほっこりテイストでごまかされているけど、実はこういった異常さがあちこちに見え隠れするから、「気持ちが悪い」「下品」という印象を与えるのだと思います。


又、嫌がらせとしてサンドイッチに陰毛を挟まれた話とか、おかんのスポンサーから、「お●んこショー」と罵られる場面も、とっても下品。何故そこにいくのか。「世の中にはこんな酷い人も居る」事を「美しい生き方の私」との対比として出したつもりなのかもしれませんが、この本に出てくる不快なエピソードには、どれもこれも性的な異様さを感じさせるものばかりで、それも気持ち悪さに拍車をかけています。下品にも色々あるけど、ここまで不快な下品さは珍しい。


さて、これじゃあんまりなので、口直しの本をば。



石田衣良さん著 sex


セックスがテーマの短編集。恋人同士、セックスレスの夫婦、無差別殺人を起こそうとする男が出会う一人の女性。石田さんの作品には、愛があります。登場人物一人一人への、暖かな眼差しがある。直接的な表現も多々あるのに描写がとても美しく、しっとりとした息遣いまでが伝わってきます。あとがきに、「いい本といいセックス、どちらも大人の生活に欠かせないもの」と書いておられます。非常に品性あふれる作家さんです。



次はこれ。

しびれフグ日記

岩井志麻子さんのエッセイ、しびれフグ日記。


岩井さんは、エッセイでは岡山弁の「~じゃけえの」「~じゃのう」を連発し、Hで過激なお話も沢山。恋愛も存分に楽しんでいらっしゃる。でも、下品じゃないんですね。それは、この方が書くことに対して真摯だからです。文章に、嘘が無いからです。



どんなに過激な事を書いても、本人に品性があれば下品にはならないのです。




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