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2009-09-08

裁判員制度 3                  想像力の無い者は愛が無い。

故、三浦綾子さんのエッセイの中に、『想像力の無い者は愛が無い』というのがあった。

どの本に載っていたか覚えていないのでうろ覚えで申し訳ないのだが、病弱な三浦さんの事を、何も言わなくても気遣ってくれる人も居れば、体調が悪いと言っているるのに一方的に家に来たがり「玄関先でいいですから」(北海道の寒い玄関先にずっと居る事は、持病のある三浦さんにとっては非常に危険な事であった)「元気そうじゃないか」と言う人も居る。相手の状況を想像出来るか否か、それは愛があるか無いかである、と言った内容のものであった。

せっかく導入された裁判員制度なのだから、被害者の痛みや苦しみを想像する事の出来る、血の通った公判であって欲しいと思う。


犯罪に関わる事を書いていると心が重くなって来るし、正直、楽しい作業ではない。

ただでさえ読者の少ないオタクブログで、何も裁判の事なんか書かなくたってって思う人も居るだろう。


しかし、「なんかおかしい」って思った事に対してネットを使って発言する事は、政治的な力も何にも持たない個人が出来る、一番簡単な方法だ。


凶悪事件のニュースを見るたびに、自分や家族が無事で生きているのはほんの偶然なんだなあとつくづく思う。

そういう事柄に対して大きな事が出来なくても、素朴な疑問や憤りを言葉にする事は、誰にでも出来る。無関心が一番良くないと思う。


さて、裁判員制度により、従来に比べて判決が厳罰化するのではないか、という声がある。これまでの裁判員参加公判での判決も、従来に比べて重いと言われているが、私はこれは厳罰化の傾向というよりは、今までの判決が被害感情に対して軽すぎた上に、過去の判例に囚われすぎて、事件そのものの凶悪さを見えにくくしていただけだと思っている。


あまりにも軽すぎる判決を見ると、その救いようのなさに寒気がする。

・米兵3人がかりで小学生を輪姦して懲役6年(求刑10年を「同種の事件に比べて重過ぎる」と減刑)。

・小学生を誘拐。10年近く監禁し、懲役14年(地裁では15年求刑)

・アパートに押し入って二人がかりでレイプして、求刑7年に対して懲役5年ちょいと4年ちょい。先日の裁判員参加の性犯罪公判で、弁護士が「懲役5年相当」って言ったのって、こういうのを参考にしているようね。

・結婚を控えた女性が輪姦され事件後自殺。犯人二人は暴行後財布を奪い、過去にも同様の事件を起こしているにも関わらず、求刑9年、判決7年。

・幼児虐待の大半が殺人罪にならず、傷害致死で済まされる現実。これ、大体3年から7年位の判決が多い。中には1年なんてとんでもないのもある。虐待って、拷問じゃん。絶対的に力のある大人が、どうあがいても抵抗出来ない子どもに熱湯かけたりベランダに全裸で放置したり何十分も殴るとか、それも毎日。完全に狂ってる。でもそれを「躾のつもりだった」「死ぬとは思わなかった」と言えば求刑より減刑されるし、救急車呼べば「助けようとした」って減刑されるし、排泄物垂れ流しでベランダ放置でも、時々残り物のおかずやパンくずを目の前に放り投げてりゃ「食事を与えていた」「殺すつもりはなかった」って事で減刑される。

書いているだけで陰鬱になってくる。でもこれが、先進国と言われる日本の現実だ。


こういう判決を下す弁護士や裁判官って、お勉強はそりゃ良く出来るんだろうけど、心のネジがぶっとんでるとしか思えない。量刑を決めるのに、「過去の判例表」を見て、「この時はこうだったから今回もこれ位で」とか、「一人しか死んでないから死刑は重過ぎる」とか「不運な生い立ちだから軽を軽くしてあげて」とか。

まるでネットの保険見積もりだ。

パソコンに必要事項放り込んで、自動的にお見積もり完了! お客様の掛け金と保障はこちらです、 みたいな。


それに日本の刑務所は海外に比べて非常に治安も環境もいい。

服役囚同士の殺人やレイプなんてまず起こらないし、室内は空調が効き、就業訓練も受けられるし医療も受けられる。入院手術費用を出所後請求される事も無く、食事は3食きっちり取れる。


老人刑務所に至っては無料老人ホーム化しており、ここに入りたいが為に、わざわざ犯罪を犯す老人が後を絶たないという。微々たる年金でボロアパートに住み、病院にも行けないような暮らしをするよりずっと快適だからだ。

片や犯罪被害者やその家族は、生き地獄同然の暮らしを強いられる。

手にする被害者給付金は雀の涙で、心身に酷い障害を負っても、その治療費や生活費は全部自腹だ。取調べや公判、通院の度に仕事を休んでクビになってしまったり、性犯罪被害者の場合は婚約破棄や結婚生活の破綻、失恋、将来を悲観して自殺するケースも多い。


それに法廷は、被害者に対して優しくない。

先日の性犯罪裁判で、被害者の別室からの音声が加工されていなかった事について、裁判員が「びっくりした」「音声加工した方がいい」と言っていたけれど、これが血の通った人間の感覚だ。

これまでセカンドレイプ裁判が横行していた現状の中では、「別室陳述出来るように配慮しただろ」って事なのかもしれないが、どこまで無神経なんだろうと思う。声質やイントネーションは、個人特定の大きな材料になるのに。 



裁判員制度を導入した以上、ただやみくもに賛成反対するのではなく、『経験した人の声を集めて、問題点を改善していく事』が大切だと思う。


今朝の新聞には、裁判員参加の公判となった、息子が起こした父への殺人未遂事件について、被害者(被告の父)が、公判後群がる記者に「裁判員と騒ぎすぎ。そっとして欲しい」と言ったと書かれたが、性犯罪事件に関わらず、自分が犯罪被害者である事を知られたくない人も居ると思う。

特に性犯罪事件への裁判員参加には賛否両論あり、被害者や関係者の中でも「一般の人になど絶対に関わって欲しくない」という意見と「是非一般の人に関わってもらって、どんなに被害者が苦しんでいるか知って欲しい」という意見に分かれているようなので、その是非について、法廷でレイプ被害者に「事件前からセックス経験ありますね」なんて事を言うような鬼畜司法関係者だけで決めず、被害者側に、公判時、裁判員の参加を希望するか否か選んでもらえるようにするなど、柔軟に対応してもいいのではなかろうか。

又、被害者やその関係者に、裁判員の参加する公判はどうだったか、アンケートに記入してもらうなどして意見を聞く事も大切だと思う。

自動車学校でさえ、卒業する時にはアンケート用紙が配られるのだ。まさか裁判員や被害者にアンケートも取らず、そのまま「はいさよなら」なんて放り出してりゃしないだろうな?(これ、実際はどうだか知ってる人、居る?)

あと、裁判員の男女比。

裁判員の男女比については混合のクジで選ばれるので、性犯罪事件の裁判員が男性5人女性一人になった事に対して、偏りを問題視する声も上がっている。

裁判員の中にも「性犯罪に関しては、女性は最低でも二人は入った方がいい」「既婚男女半々が望ましい」と言った意見があった。

しかし最終的には、わたしは男女の感覚と言うよりは、個人の価値観や想像力の問題だと思っている。

昔、大阪府知事が選挙カーの中でアルバイトの女子大生にわいせつ行為をした事件で、その行為の最中、ショックのあまり抵抗出来ず、後日訴訟を起こした被害者に対して、複数の女性識者が「何故その時大声で叫ばなかったのか。後から裁判を起こすなんて甘えている」と言った趣旨のコメントを出し、騒ぎになった。

男には性犯罪被害者の気持ちがわからないとか、女だから性犯罪被害者の気持ちがわかる、と言い切る事は出来ない。

又、既婚か未婚かで簡単に判断する事も出来ないだろう。肩書きの立派な既婚男性でも、実は極端な男尊女卑思想者で、職場ではパワハラ上司、家ではDV夫なんてケースは山ほどある。逆に、未婚の若い青年でも、女性に対して紳士的に接する事が出来、被害者の痛みを想像する事の出来る人も居る。


裁判員が決まったら、公判に入る前に、裁判員の無神経な発言で被害者が傷つかないように、「禁句集」を配布して、「セカンドレイプ発言をしません」「被害者を侮辱し、傷つけるような卑劣な質問はしません」と言った誓約書を書かせる位してもいいと思う。といっても、司法関係者自体が「どういう言動で被害者が傷つくか」わかっていなけりゃ意味無がないが。

青森の事件で、自宅で暴行された女性は事件後も経済的理由で引っ越せず、犯人の報復に怯えながら、たった一人でその部屋で毎日を過ごしていたと聞いて、胸のつぶれる思いがした。レイプ被害者を無料で保護し、療養させ、社会復帰の手助けをする専門施設が必要だと思う。

又、補足になるが、強姦などの性暴力の被害者は女性だけでは無い。男性(子どもも含む)に対する性暴力事件も実際にあるのだが、被害者が男性の場合、強姦罪は成立せず、強制わいせつにしかならない。これは日本の刑法では、強姦被害者を女性に限定しているからで、こういった所も改善すべきじゃないかと思う。


元裁判員の方も指摘していたけれど、国は被害者保護にもっともっとお金も知恵も使うべきだ。


今日で、裁判員制度について書くのは一旦終わりにするが、ここまで読んだ方は、私がどうしてここまでこういった事に拘るのか疑問に思ったり、私を極端なフェミニスト、或いは極刑賛成者だと思った人も居るかもしれない。

私は犯罪被害者ではないし、その家族でもない。死刑制度を100%支持しているわけでもないし(死刑廃止には終身刑の導入が不可欠だと思っている。現状のまま死刑だけを廃止するのは、凶悪犯や猟奇殺人鬼を世に放つ事になり、危険すぎる)特別な運動をしている活動家でもない。

ただ、犯罪という、何時誰が巻き込まれてもおかしくない事について、無関心でいちゃいけないんじゃないか、それについて、せっかくブログをしてるんだから、ニュースを見て感じたモヤモヤを、自分自身の言葉で整理することって、大事かもしれないな、と思った、それだけだ。


10代の頃、近所に住む、小学校時代の同級生のお父さんが、ある犯罪に手を染めて逮捕された。

殺人や性犯罪ではないが、自宅に警察官が突入しての逮捕。町内は大騒ぎになったし、全国紙の一面に載った。


同級生は真面目な大人しい子で、秀才だと評判のお兄さんが居た。お母さんも優しい人で、パン屋さんでパートをしていた。ピアノ教室の帰り、パート帰りのおばさんとバスが一緒になると、パート先で貰ったまだ温かいパンを「残ったのは全部捨てるのよ。勿体無いから貰って帰ってるの」と沢山分けてくれた。木造の古い造りの、小さな家に住んでいた。


おばさんも同級生も大人しくて服装も地味だったが、父親だけはいつも高そうな服を着て、超がつく高級外車を乗り回していた。パートに出ていたおばさんや大人しい同級生がその車に乗せて貰っているのは見た事が無かった。

逮捕後、一家は忽然と姿を消した。

暫くして判決が出て、やはり新聞に載った。

懲役5年程度だったと思う。


色んな事件のニュースを見ると、ふと、三浦綾子さんの「想像力の無い者は愛が無い」という言葉が浮かんでくる時がある。そしてそれは必ず、一緒にバスを降りてからおばさんがくれた、袋の中の白くて丸いパンの光景と、セットになっているのだ。


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